需要志向型価格設定
需要志向型の価格設定は、消費者の視点から価格を設定するものです。
これには、知覚価値価格設定と需要差別型価格設定があります。
❶知覚価値価格設定
知覚価値価格設定では、まず、フィールドリサーチ(実地調査)や消費者に「このプロダクトがいくらなら買うか」という内容のアンケート調査を行うなどして、消費者の値ごろ感を探ります。
極力その調査結果を踏まえた価格設定を行うようにして、消費者の知覚価値(あるプロダクトに対して抱いている価値)を優先した価格設定といえます。
例えば、製造原価が1つ500円のキャラクターグッズに価格を付ける場合、コストプラス型価格設定と知覚価値価格設定を比較すると次のようになります。
・コストプラス型価格設定(チーム関連グッズ1個当たり)
製造原価500円+販売・流通費500円+上乗せ利益500円=販売額1500円
・知覚価値価格設定(チーム関連グッズ1個当たり)
製造原価500円。顧客アンケート調査の結果、このチーム関連グッズは700円なら買いたいという人が多かったので、販売額700円に決定。
このように知覚価値価格設定では、販売・流通費や上乗せ利益よりも、「顧客が買いたい価格」を重視します。
しかし、この価格を重視するあまり企業が必要とする上乗せ利益額が確保できない場合や製造原価や販売・流通費を下回る価格が出てこないとも限りません。
このような場合、一般的に次のような対策がとられます。
1つ目は、利益の確保への対策。需要志向型価格設定では、販売額を決定した上で、製造原価や販売・流通費を企業が利益を確保できるように削減するのです。
これには多大な企業努力や取引先などの協力が不可欠です。
2つ目は、顧客の知覚価値自体を上げるという対策。広告、PR、パブリシティなどを通じて消費者にプロダクトの特長や価値をアピールすることが挙げられます。
例えば、たんなる缶コーヒーだと設定可能な金額は100円程度にとどまりますが、「高級豆使用」などの特長を強く伝えることで、消費者がそれよりも高い価格でも買いたいと思うようにすることなどです。
❷需要差別型価格設定
需要志向型価格設定には、知覚価値価格設定の他に需要差別型価格設定があります。需要差別型価格設定とは、顧客の需要の度合いに応じて価格設定を変化させる方法です。
典型的な需要差別型価格設定は、航空、鉄道などのチケット代金やホテルの宿泊料金に見られます。
夏休みやゴールデンウィークなどの繁忙期と顧客が少ない閑散期では料金が異なります。
その他、学生割引やシルバー割引などの顧客層による価格設定、電気料金の深夜割引、タクシーやレストランの深夜割増も需要差別型価格設定の例といえるでしょう。
試合の観戦チケットは需要によって価格設定が異なることが多いです。例えば、先に紹介したワールドカップやウィンブルドンの観戦チケットなどは、日程やコートごとに値段が異なります。
その他、世界の人気スポーツの試合では、観戦チケットがプレミアムチケットとなり、人気の度合いにより価格が変動し、観戦席によってはかなり高額で流通します。