スポーツとマーケティング
スポーツのマーケティングについて、「はじめに」でも述べたように、参考にしているのは、世界的に著名なマーケティング学者、フィリップ・コトラー*の『マーケティング3.0』を基軸とした考え方です。
コトラーによれば、マーケティングはかつての「製品中心(product-out)」のマーケティング1.0の終えんと共に、「消費者志向(market-in)」のマーケティング2.0の段階が現れたが、いまやそれも終わりを告げ、互いの立場を超えて共に恊働し「価値創造」を目指そうとする、マーケティング3.0の段階を迎えていると説いています。
一般的な企業においては、社会に対する活動はその企業の主たるビジネス活動とは別に行われることが多いです。
しかし、スポーツ団体や組織の場合、社会との結び付きが深く公共性も非常に高いため、活動そのものが社会貢献となり、社会に与える影響が大きくなります。
したがって、スポーツビジネスの場合、活動自体が社会貢献事業ということになります。
スポーツビジネスで必要なのは、マーケティング3.0的発想
スポーツでは、顧客としてのファンだけではなく、様々なステークホルダー(利害関係者や関連する人々)を重視することが大切です。
スポーツの場合には、チームの選手、対戦チームの選手、そして両チームを応援する観客、さらには裏方として様々な手配をするスタッフ、スポンサー、関連組織、そして地域住民、自治体、その他連携する多くの企業や団体といったステークホルダーがいます。
そして社会が一体となって価値を創造しています。
今後、こうした動きが加速化していくことになるでしょう。
また、マーケティングの指標や位置付けについても、一般企業のように製品やその価値が主体ではなく、団体や組織としての理念(ミッション)、未来像(ビジョン)、価値(バリュー)が重視され、製品としてのプロダクトに対し、機能面や感情的価値に加え精神的価値の創造が求められます。
スポーツマーケティングの3つの特性
その他、スポーツマーケティングは、「参加すること」、価値を創造するために多くの関係者が互いに「恊働すること」、そして社会の一部分としての「文化的要素」の3点が融合したマーケティング3.0の特性を兼ね備えています。
- 参加すること
- 恊働すること
- 文化的要素
スポーツを通じたマーケティングの基本的な『理解と方向性』を解いていますが、必ずしも考えが皆さんの事例に当てはまるわけではありません。
その意味では、記述がすべて正解とはいえません。
なぜかというと、マーケティングといっても、対象や立場、状況などによって多くの意見や考え方、または手法があって当然だからです。
スポーツマーケティングは、多様である
言い換えれば、あなたの現状に合っていて成果を上げている、または成果が期待できれば、その考え方が皆さんの事例においては正解というわけです。
「マーケティングとは、何か」、そしてそれがスポーツと融合した場合にどのような意味を持つのかといったことについて、「定義」を明確にすることを目的の一つとしています。
スポーツとマーケティング3.0的発想が融合するとどのようになるのか。
これについては、「スポーツマーケティングの定義」で述べますので、読者の皆さんがそれぞれ個々の現状をふまえて、ご理解いただければと思います。
※フィリップ・コトラー
*フィリップ・コトラー 米国のマーケティング学者。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授。その多大な功績から「近代マーケティングの父」と称される、マーケティングの大家。