経験価値マーケティングとスポーツ

マーケティング

スポーツと経験価値マーケティング(Experiential Marketing)とは、

消費者は、何等かのベネフィットを得るために消費をするということは、すでにお話ししました。

例えば、消費者がドリルを買うのは、ドリルそれ自体というよりも、「壁に空 ける穴」を手に入れるためですし、洗濯機を買うのは、汚れが落ちた「清潔な衣類」を手に入れるためのはずです。

つまり、プロダクトの購入は物としてのプロダクトそれ自体ではなく、そのプロダクトがもたらしてくれるベネフィットが目的だということです。

ただし、スポーツなどのサービスプロダクトでは、「経験」を消費する、という側面もあります。

例えば、映画を見に行くのは、ストーリー展開を楽しみ優れた音響と映像に触れて感動を味わいたいからかもしれませんし、一緒に映画を見に行った恋人や知人たちと共通の話題で楽しい時間を過ごしたいなどの「経験」への欲求が存 在するからかもしれません。

また、スターバックスでコーヒーを飲むのは、コーヒーを飲みたいというだけではなく、コーヒーの香りが漂うおしゃれな空間で「スタバでひとときを過ご す」という「経験」を欲しているからともいえるでしょう。

旅行などはまさに「経験」を消費するための端的なサービスといえます。

見知らぬ国や地域に出向いて日頃と違う時間を過ごし、その空間に自分の身を置いて、そこでの「経験」を楽しんでいるわけです。

その他経験マーケティングが最も意識されているのが、テーマパークです。

特にディズニーランドは、経験マーケティングの宝庫といってもよいでしょう。

ミッキーやミニーをはじめ、お馴染みのディズニー・キャラクター達が闊歩 する「夢の世界」というだけではなく、アトラクションや出し物は絶えず変化し何度行っても新鮮な感動を与えてくれます。

従業員もよく教育され、夢の国の一員として、顧客に接しています。

顧客はディズニーランドでのそうした「経験」を購入しているのです。変な言い方ですが、顧客はディズニーランドの「経験マーケティング」を経験しているといえるのです。

いずれにしても、その空間を訪れた顧客がそこでどのような経験をするのかが重要です。

今後は、ドラマのようなストーリー性や娯楽性、そして新鮮味のある経験を与えることのできる空間を提供する施設に多くの顧客が訪れることでしょう。

そしてスポーツもまた、「経験」を消費するためのサービスなのです。

スポーツには、「観戦型」と「参加型」があることはすでにお話ししました。

いずれも、顧客は競技場にいることで感動や昂揚感を味わうことやスポーツで体を動かす体験自体に価値を見出します。

つまり顧客は、その試合観戦や自 らが競技に参加するという「経験」を消費していることになります。

近年、日本人メジャーリーガーが増えて以来、海外に観戦ツアーに出かける 人も増えました。そのような場合も試合を観戦するだけでなく、例えばある選手が記録を達成しそうだからそれを見たいとか、スタジアムが閉鎖するので最後 の試合を見に行きたいなど、特別な経験を求めて観戦に出かけるケースも増え ています。

プロ野球では、以前チームメイトとかぶりものをかぶって球場に現れたり、様々なパフォーマンスをしてファンを魅了する選手がいました。

彼の行動には、一部で批判もあったようですが、ファンを楽しませ、感動させ、鮮烈な思い出を提供するという点では、優れた経験マーケターだったといえるでしょう。

昨今では、各チームがファンサービスに重点を置き、多くの選手が経験マーケターとして活動しています。

また「参加型」の顧客も経験価値を求めています。一例を挙げれば、ゴルフ発祥の地として世界的に有名なセントアンドリュース(スコットランド)でプレイするという経験を求めているのです。

したがってスポーツプロダクトを提供する際、こうした特別な価値に着目することも重要となります。

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