スポーツとガバナンス
食品の消費期限偽装や産地偽装、建物の耐震偽装、あるいは、インサイダー取引や粉飾決算、個人情報漏えいといった企業不祥事が近年相次いで公になりました。
このような問題を回避する取り組みとして、コーポレートガバナンス(企業統治)の必要性が叫ばれるようになりました。
これは、スポーツビジネスについても同じです。
2004年に起きたプロ野球チームの「不正スカウト問題」もその一つです。
スカウト側が獲得を希望する選手に対して、「栄養費」などと称して多額の金銭を渡して囲い込みをはかり、受け取った本人は退部に追い込まれ責任者などが辞任に至る問題も公になりました。
また、相撲界では、2007年のリンチ死亡事件、2008年の大麻問題、2010年の野球賭博問題に2011年の八百長疑惑など、社会的に影響のある不祥事がメディア等で大きく取り上げられました。
こうした事件に関わっているのは、その競技関係者のごく一部でしょうが、事件が発覚すれば、とたんに競技そのものの人気やイメージにマイナスの影響を与えます。
もちろん発覚の有無が問題ではなく事件そのものが問題であって、こういったことが起きることのないように常日頃から規則やルールを明確にする必要があります。
プロスポーツ以外でもガバナンスの問題が浮上することが少なくありません。
高校野球では時々高校生や監督の不祥事が生じ、社会問題化することがあります。
この場合にも高野連(財団法人日本高等学校野球連盟)を中心に規則やルールを基準にコーポレート・ガバナンス同様の統治が行われています。
ここでスポーツ組織におけるコーポレート・ガバナンスの考え方や取り組みについて少し考えてみたいと思います。
コーポレート・ガバナンスは、一般に「企業統治」と訳されます。
企業統治とは、言い換えれば企業の経営を監視し、不祥事等が起こらない企業体質にするために規律を作り統制する仕組みです。
ではなぜ、スポーツ組織にも企業統治の仕組みが必要なのでしょうか。
スポーツは公共性が高く、社会の影響力も非常に強いことは前述のとおりです。
公共性が高いスポーツを「営む」ということは、多くの企業と同様に社会的責任を負います。
社会的責任を果たすために、スポーツ組織や団体にもコーポレート・ガバナンス同様の規律や監視等の仕組みが必要となるのです。