STPパラダイムとマーケティングの進め方
コトラー独自の考え方がよく現れているのが、マーケティングの進め方です。
コトラーは、まずプロダクトは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの戦略面を、順を追って行う必要があると説いています。
また4P*は、プロダクトが完成した後の段階に深く関係していると述べています。
このようなコトラーの戦略に対する考え方は、それぞれの頭文字をとって、STPパラダイムと呼ばれています。
ちなみにパラダイムとは、基本的なものの見 方・考え方、あるいは思考の枠組みのことをいいます。
また、コトラーは、マーケティングの進め方についても独自のフレームワークを持っています。
コトラーは、これを「持続可能なマーケティング事業モデルの戦略的事業体系」と名付け、9つの核となるマーケティング要素を次の3つのグループに分けて体系付けています。
①戦略:
セグメンテーション(S:Segmentation)市場細分化、ターゲティング(T:Targeting)市場の選定、ポジショニング(P:Positioning)市場での位置づけ
②戦術:
差別化、販売活動、マーケティング・ミックスなど
③価値:
ブランド、サービス、プロセスなど
仮にこれを料理するときのフレームワークととらえるなら、①が素材選び、② が下ごしらえ、③ が味付けといったところです。
どれも料理(マーケティング) には重要な要素です。
具体的な流れとしては、① 戦略 →② 戦術 →③ 価値の順で進めていきます。
①~③の各グループはそれぞれ役割を担っています。
次に各役割について簡単に説明します。
戦略の役割は、消費者のマインド・シェアの獲得です。
マインド・シェアとは、消費者が商品を購入する際にある特定の企業を思い浮かべる割合のことです。
例えば、野球のグローブといえばミズノ、バスケットシューズといえばナイキという具合です。
スポーツの場合は、クラブチーム自体がマインド・シェアを獲得している場合もあります。
サッカーの世界的に有名なチームはアーセナルやACミラン、バルセロナなど、ヨーロッパの名門サッカークラブです。
戦術の役割は、企業のマーケット・シェアの獲得です。
マーケット・シェアとは、市場でどれくらいのシェアを持っているかということです。
言い換えれば、競合他社に比べて自社がどの程度、市場に浸透しているかということを指しています。
価値の役割は、消費者のハート・シェアの獲得です。
マインド・シェアと似ていますが、ハート・シェアの場合には、消費者が企業を思い浮かべるだけにとどまらず、その企業に何らかのロイヤルティ(忠誠心) や愛着を抱く状態にさせているかを表しています。
*4P
マーケティング・ミックスの4つの要素。一般にProduct(製品)、Price(価格)、Place(場所、チャネル)、Promotion(促進)が挙げられる。