顧客第一主義を徹底するための方針:ホスピタリティ産業
コトラーは、顧客第一主義を徹底するには、まず、CS*(顧客満足)を高める体制づくりが大事だと考えています。
先にも述べたようにホスピタリティ産業では、顧客との関係性の良し悪しでサービスの価値が決まる面があります。
したがってほんの些細なことに対して も、配慮し留意しなければなりません。
ホスピタリティ産業の代表格といえるホテルのサービスを例に挙げると、ホテルでの接客の仕方や顧客への電話やメール対応、顧客の要望にいかに応える かなどがあります。
いずれも日常的な業務の一つですが、これらにどのように取 り組むかによって顧客満足度は大きく変ってくるものです。
プロスポーツチームの場合、試合に勝ち続けることは優先順位が高い目標の一つです。
しかし極論すれば、試合にさえ勝ち続ければファンが満足するかと いうと、必ずしもそうとはいい切れない面があるのです。
コトラーは、全従業員がマーケティング志向でなければならないと語っています。
仮に運営スタッフのひとりでも顧客第一主義を忘れた行動を取ると、ただちに顧客満足度を低下させ全体の評判を落としてしまうのです。
下記は、2009 年に慶應義塾大学理工学部の鈴木研究室が行った「プロ野球のサービスに関する調査」の結果の一部です。
そのチームのファンサービスは充実している 1:まったく思わない~ 10:非常に思う
順位 球団名 平均点
1 位 日本ハム 7.69
2 位 ロッテ 6.89
3 位 ソフトバンク 6.55
4 位 楽天 6.55
5 位 阪神 6.52
6 位 西武 6.17
近年、そのチームは優秀な成績をおさめている 1:まったく思わない~ 10:非常に思う
順位 球団名 平均点
1 位 日本ハム 8.41
2 位 西武 8.17
3 位 中日 8.09
4 位 阪神 8.06
5 位 巨人 7.18
6 位 オリックス 5.68
チーム名は、それぞれ上位6 チームだけが公開されています。
これを見る限り、近年「優秀な成績をおさめている」と思われているチームと「ファンサービスが充実している」と思われているチームでは、共通しているチームもありますが、半分の顔ぶれが入れ替わります。
もちろん、チームにとっては勝利することが最優先の目的であることに変わりはありません。
しかし、ごく一部ですが、チームが強ければ収益が上がるという考え方に基づいて年俸が高額な選手を多く集めることに専念し、経営が行き詰まってしまう、というケースも見られます。
もとは地域振興の目的でチームを結成したはずが、経営の行き詰まりによって自治体が救済支援を余儀なくされることもあります。
このようなことでは本末転倒です。
先ほども述べたように勝利することは重要ではあるのですが、コスト面を無 視した無理な補強は避けるべきです。
それよりも、顧客としてのファンやサポーターといかに良い関係を創れるか をよく考えておく必要があります。