インターナル・マーケティングの段階|報奨・評価制度の導入

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報奨・評価制度の導入

インターナル・マーケティングの効果を上げる手段の一つに報奨・評価制度の導入があります。

そこで代表的な、人材評価でとても有効な考え方を紹介し ておきましょう。

それは有名な経営管理手法の一つで「X 理論・Y理論」というものです。

D. マグレガー*という米国の心理学者が提唱しました。

マグレガーは、人間の評価について古い経営管理論の見方を「X 理論」、新たな人間関係論的な見方を「Y 理論」と呼びました。

X理論とはいわゆる「性悪説」的な見方です。

人間は生まれつき怠け者で仕事が嫌いだから厳しく指示されないと動かない、という考え方です。

一方、Y 理論は「性善説」的な見方です。

人間は仕事に対して喜びを感じることができるし、強制されなくても、自分が納得すれば、目標達成に向けて努力するものであるというものです。

従来は、X 理論的な発想で従業員を指導する会社が多かったのですが、最近は、Y 理論を重視する会社が増えてきました。

そのほうが業績が上がっている会社が多いようです。

ホスピタリティ精神の旺盛な従業員に対して、X 理論をベースにした指導をしていては、創造性が発揮されず、従業員自身の職務満足は低 下する可能性があります。

このことは決して顧客の満足の向上にはつながらな いでしょう。

ホスピタリティ産業においては、従業員と顧客との間でサービスが成立するという特性がありますので、サービスの質を上げるにはY 理論的な見方が必要になってくるのです。

X 理論・Y 理論

X 理論 Y 理論
人間は仕事が嫌いで、できれば避けたいと思っている。 人間は遊びと同じように仕事を生来嫌っているわけではない。条件次第で満足の対象となる。
生来人間は仕事が嫌いなのであるから、強制や命令、懲罰等が必要である。 自ら納得し身を委ねた目標達成のためなら、自らを鼓舞するものである。
普通の人間は、野心はそれ程抱いておらず責任はできるだけ回避したいし、安全や安定を望むものである。 普通の人間は、責任を持って任されることをよしとするものである。
創造性豊かな人間はまれである。 多くの人が創造的であり、工夫ができ、想像力もある。

出典:『経営学のきょうか書』(宮㟢哲也著、秀和システム刊)

その意味では、評価制度、提案制度、報奨制度などは、Y 理論の考え方を具体的なかたちで制度にしたものといえるでしょう。

これらが充実することによって、従業員に「自分が会社に認められている」という気持ちにさせ、やりがいを持たせることができるのです。

もちろん、実際には、客観的な評価を行ったり、斬新な提案を受け入れたり、 報奨金を出したりしている企業は少なくありません。

ただコトラーによると、産業で現実に採られているマーケティング手法は、特に売上やコスト削減等を対象としたものが多いとのことです。

今後は、さらに顧客満足を中心とした人材評価制度づくりに力点を置く必要性がより増してくることでしょう。

いずれにしても、企業は、顧客や消費者を対象としたエクスターナル・マーケティングと従業員を対象としたインターナル・マーケティングの両方にバランスよく取り組む必要に迫られています。

*D.マグレガー 米国の経営学者。『企業の人間的側面』の著者としても有名。

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