サービス産業としてのスポーツの特徴(3)-3

サロン

生産と消費が同時に行われる

サービスは、有形財と違って生産と消費が同時に行われます。

レストランで食事をする場合、その場で出された料理を顧客はその場で食べます。

歌舞伎などの劇も役者が演じているその瞬間に消費が行われていること になります。

スポーツビジネスで試合というサービスを提供する場合も同様です。試合を行う(生産)と試合を観戦する(消費)は、基本的に同時に行われます。

これらのサービスは状況の変化の影響を受けやすく、常に品質を一定に保つことは非常に難しいといえるでしょう。

レストランでは看板メニューの味付けが気に入っていたのでたびたび訪れていたのに、あるときシェフが変わり塩加減や焼き加減が変わっていると顧客の求めるサービスとは異なることになります。

老舗のレストランでも毎回まったく同じ味の料理を提供するというのは簡単なことではありませんが、だからといって味付けや調理法に一定のルールや基準がなければ、このようなことが起こり得るのです。

スポーツの試合の場合も毎回結果や内容は異なりますし、活躍する選手や観客も同じということはありません。

しかし、勝負にこだわる姿勢やそこで各自が全力プレーをしている姿、フェアーで真摯な態度などが、状況の違う中で観客 の満足度を上げる重要な要素となるのです。

つまり、サービスの質を一定に保つことができなくても、できるだけ維持・向 上させようとする努力が極めて重要であることに変わりはないということです。

まさにこれらの行為がサービスを創造し価値を高めることとなるのです。

サービスは、取り置きや在庫ができない

サービスには形がなく生産と消費が同時に行われる、ということはすでにお話ししました。

たとえば、エステシャンが施術を提供すると同時に顧客はそれを受けることとなるのです。

ホテルなら部屋を提供すると同時に顧客 はそこに滞在して空間を消費することになります。

言い換えると、サービスは提供した瞬間に消費され消滅してしまうというこ とです。

また基本的に、有形財のように取り置きや在庫もできません。

観客が3 万人入るスタジアムで行われたある日の試合で、観客が2 万人だったとします。

この場合、サービスを提供する機会はどうなるでしょう。

観客との差1 万人分の座席を在庫として保管して、次の試合のときに4 万人分の座席を提供するなどということはできません。

その日に入らなかった1 万人分の座席は永遠に失われ消えていくこととなるのです。

現実には、試合の映像などをDVD やVTRなどに記録して後で有形物として活用することはできますが、これらはあくまで二次利用としての活用ですので1 万人分の在庫を保管することにはならないのです。

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